想像より重い附帯税

附帯税とは?

附帯税は申告期限までに税金を納めなかったこと等に対する追加の税金です。
ペナルティとしての性格があると思ってください。
そして、このペナルティには、期限を守れなかったことに対する利子的なものと罰則的なものがあり、少々複雑です。
実際に、このペナルティを課せられる人にとっては、計算方法が気になると思いますので、その内容と計算方法をご説明いたします。

利子的性格を有するペナルティ

【延滞税】(国税通則法60条

  • 納期限までに完納しなかった場合の遅延利息
  • 計算方法:未納税額×年14.6%(※1)×計算期間(※2)÷365

【利子税】(国税通則法64条

  • 延納または申告期限の延長に伴う納期の延長の場合
  • 計算方法:延納額×年14.6%(※1,※2)×計算期間(※3)÷365

罰則的性格を有するペナルティ

【過少申告加算税】(国税通則法65条

期限内に申告書を提出したものの、その申告にかかる税額が少なかったため、その後修正申告書を提出したとき(または税務署から更正されたとき)に追加で課される税のこと

  • 税務調査を受ける前に自主的に修正申告をした場合・正当な理由がある場合:加算税率なし=過少申告加算税は課されません。
  • 期限内申告の場合で、修正申告・更正があった場合
    • 納税額のうち、納税額と50万円とのいずれか多い金額までの部分:加算税率10%
    • 納税額のうち、納税額と50万円とのいずれか多い金額を超える部分:加算税率15%
    • (上記をまとめると)計算方法:(追加納付税額×10%)+(「追加納付税額-期限内納付税額」と「50万円」のいずれか多い金額を超える金額)×5%

【無申告加算税】(国税通則法66条

期限内に申告書を提出せず、申告期限を過ぎて申告書を提出した場合(または税務署から税額について決定があった場合)に追加で課される税のこと。

  • 自主的に申告したとき
    • 計算方法:納税額×5%
  • 税務署の指摘を受けて申告したとき・税務署から決定処分をうけたとき
    • 納税額のうち、納税額と50万円とのいずれか多い金額までの部分:加算税率15%
    • 納税額のうち、納税額と50万円とのいずれか多い金額を超える部分:加算税率20%
    • (上記をまとめると)計算方法:(追加納付税額×15%)+(「追加納付税額-期限内納付税額」と「50万円」のいずれか多い金額を超える金額)×5%

【不納付加算税】(国税通則法67条)

源泉徴収の方法により預かった国税を法定納期限までに完納しなかった場合に追加で課される税のこと

  • 計算方法:源泉徴収して納めるべき税額×10%
  • 税務署から未納決定処分を受ける前に、自主的に納付したときには、5%に軽減される

【重加算税】(国税通則法68条

過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税を課すべき納税義務違反が、
事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に重加算税が課せられる。
つまり、重加算税は事実の隠ぺいまたは仮装という悪質な手段で税金を免れようとする納税者に対するペナルティなのです。
それから、過少申告加算税を課せられた上、さらに重加算税を課せられると勘違いしている方がいますが、
重加算税は、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税に代えて課されるもので、併課されません。

  • 過少申告加算税・不納付加算税に代えて課せられるとき
    • 計算方法:納税額×35%
  • 無申告加算税に代えて課せられるとき
    • 計算方法:納税額×40%

重加算税は、「隠ぺい又は仮装」に基づく税額にかけられるものなので、本来納付すべき税額全体ではなく、「隠ぺい又は仮装」に基づく部分にのみ課せられるものです。申告漏れの一部が「隠ぺい又は仮装」に基づくものであるからといって、追加で納付する税金すべてに重加算税が課せられるわけではありません。

納期限

    • 期限内に申告された場合には法定納期限
    • 期限後申告又は修正申告の場合には申告書を提出した日
    • 更正・決定の場合には更正通知書を発した日から1月後の日

民法491条の順番ではありません

民法上は「債務者が元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済の充当について当事者間に合意がないときには、常に費用、利息、元本の順に充当しなければならない」(民法491条)と規定されています。
この順序でいくと、税額の一部しか納付できない場合は、延滞税・利子税から充当されることになり、
本税を超える金額を納めたにもかかわらず、本税が残り延滞税・利子税が発生し続けることになります。

当然といえば当然なのですが、民法が適用される訳ありません。しっかりと国税通則法62条2項で規定されており、本税から充当されます。

地方税は?

いままでは、国税の話です。
地方税(法人であれば法人の都道府県民税、区市町村民税、個人であれば、個人の都道府県民税、市町村民税、事業税)には、加算金はありません。
ただ、法人事業税に対しては、おおむね国税と同様な要件と割合で過少申告加算金、不申告加算金、重加算金を課しています。
また、分離課税に係る退職所得の所得割についても、その徴収義務者に対して、過少申告加算金、不申告加算金、重加算金を国税と同じ割合で課しています。

お願い

税務調査を受けた直後、税理士に「追加される税金はどれくらいですか?」と聞く人がいます。
しかし、調査直後では、本当に大雑把な予想しか答えることができません。
そして、その大雑把な予想を税理士が答えると、それだけですむと思われてしまいますので、
本税以外に、附帯税が発生することを説明します。
そうすると、「その加算される税金はどのくらいですか?」と必ず聞かれます…
制度を説明するだけで終わります。計算できないのです。
正直な所、例え税理士でも延滞税の「前年の11月末日の基準割引率+4%」という税率など覚えていません。
税率を覚えていても、いつ納付できるのかわからない限り計算できません。
税理士でも調査直後に、過少申告なのか重加算なのかわかりません。
税理士である限り、附帯税の説明はきちんとしますが、具体的な税金の額は答えられません。
気持ちはわかりますが、できたら聞かないでください…

注釈

  • ※1:所得税・法人税の場合で、相続税と贈与税の場合は割合が異なります。
  • ※2:法定納期限後2ヶ月間は、年「7.3%」と「前年の11月末日の基準割引率+4%」のいずれか低い割合を適用。各年の割合は「延滞税の割合(国税庁)」参照。
  • ※3:原則として法定納期限の翌日から完納する日までの日数ただし、期限内申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除されます。また、期限後申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には、その申告書提出後1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除されます。
  • 「延滞税の計算方法(国税庁)」も参照してください。