続・財産分与と税金

居住用不動産の財産分与①

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
(所得税法33条、租税特別措置法35条、租税特別措置法施行令20条の3,23条、租税特別措置法施行規則18条の2など)
また、自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることもできます。
(租税特別措置法31条,31条の3、租税特別措置法施行令20条の3、租税特別措置法施行規則13条の4)

税理士の目

これらの特例を受けるためには
「親族以外への譲渡」
という要件があります。
つまり、離婚“後”
に財産分与として不動産を渡さなければならないのです。
離婚の前後で大きく税金が変わってしまいます。
また、居住用不動産を財産分与するだけでなく、
居住用不動産を売却して現金化し、その現金を分与するときにも特例を気にする必要があります。

居住用不動産の財産分与②

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例があります。
(相続税法21条の5,21条の6、相続税法施行規則9条、租税特別措置法70条の2の2)

税理士の目

こちらの特例を使うと、
離婚“前”
に2,000万円相当の不動産を贈与して、
離婚後に残りの持分を財産分与することで、
税金を軽減できるかもしれません。
ただし、配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができませんので注意してください。

居住用不動産の財産分与③

ローンが残っている居住用不動産を財産分与する場合は、住宅の時価から分与時のローン残債を差し引いた残りの額が財産分与の対象になります。
そして、ここにも特例が存在します。
平成25年12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの債務残高を下回る価額で売却して損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することがでるというものです。
(租税特別措置法41条の5の2、租税特別措置法施行令26条の7の2、租税特別措置法施行規則18条の26など)
この特例を、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。
なお、これらの特例は、新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合であっても適用することができます。

税理士の目

自宅を売却し、その譲渡所得税について居住用財産の3,000万円控除や買換え特例(特定のマイホームを、平成25年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができもの(租税特別措置法36条の2,36条の3、租税特別措置法施行令24条の2、租税特別措置法施行規則18条の4))の適用を受ける場合、買換え後の自宅に係る住宅ローンについて、住宅ローン控除の適用は受けられません。
つまり、3,000万円控除、買換え特例と住宅ローン控除の有利な方しか選べないということです。
また、3,000万円控除,買換え特例と住宅ローン控除の重複適用の制限期間は、3,000万円控除,買換え特例の特例の適用を受けた年分及びその前後2年分(前々年分、前年分、翌年分、翌々年分)です。
離婚の“前”“後”だけでなく、
どの特例を使うのが有利か?
重要な問題です。
しかし、具体的なお話を聞かないと即答できません。複雑なのです・・・

まとめ

財産分与にも税金がかかる可能性がある。
離婚でダメージを受けた状態にもかかわらず、
税金で追い打ちをかけられてはいけません。
事前に、税金が発生するのか?
発生するとしたらどうすればいいのか?
そこまで考えて離婚する人は少ないかもしれませんが、
できることなら税金についても考えておきましょう。

補足

特例の要件は他にも色々あります。
長くなるので、ネットで調べるか、お近くの税理士にご相談ください。